計算用ソフト導入編-超初心者向け完全無料の量子化学計算入門1

第一回講座→これ
第二回講座→Diels-Alder反応をシミュレーション!量子化学計算ソフトで遊んでみよう

今回の記事(第一回講座)のポイント
  1. パソコンで量子化学計算を遊ぶには3種のソフトが必要。
    ・分子を3D描写して座標を設定するモデリングソフト
    ・計算の条件などを書いたインプットファイルを作るソフト

    ・難しい理論を使って数字を実際にこねこねする計算用ソフト

  2. 3D描写・インプットファイル生成ソフトは無料のWinmostarをいれてみよう!細かい設定を行いたいと感じたら無料のMoCalc2012を補助としていれてみよう!
  3. 数字をこねこねするソフトは、もちろん無料のMOPAC、NWChemの二つをとりあえずいれてみよう!でも、MOPACはWinmostarに同梱されてるからあらためて入れる必要はないぞ!

ども

最近研究で、分子の安定な構造計算するとかでDFT計算やり始めました。とんでもなく難しい理論ですね。わけわからんです。

ということで入門用のサイトを探して勉強しようとしたのですが・・・どのサイト読んでも何言ってんのかさっぱりわかりません。

ほんとに同じ人類が書いているのでしょうか。じつは計算化学の世界は異世界人から構成されるコミュニティなのではないでしょうか。パソコンで困ったときにマイクロソフトのQ&Aサイトに迷い込んだ時くらいの異世界感・疎外感を感じました。どうしてこんなにも分かりやすい説明で君だけ理解できていないの?こんなこと誰だってわかって当然だよ?って言われてる感じ。こわい。

皆さん頭いいんだなぁとか感じます。打ちのめされました。圧倒的挫折です。私には計算化学は無理です。教授、テーマ変えてください。
・・・なんて甘いこと言ってたら叩きのめされます。

ということで、いろんなサイトとか本とか読んだうえで初心者でも理解できた部分をまとめて記事にしていくつもりなので、これから勉強始める人は参考になるんじゃないかなと思います。高校生くらいの知識層でも読めるレベルを目指すつもり。ファインマンの有名な名言がどうたらってわけじゃないけど。私の計算化学知識は皆無に等しいので自然にそうなると思う。

一応WFPの記事と並行して連載しようとおもってます。研究に関連する分こっちのほうが優先かもしれない。


とりあえず、DFT計算がなんやねんってことまで理解できるようになりたい。だからまずは計算用のコンピューターソフトが必要だよねってことで調べました。wikipediaにすごいまとまってそうなページがあったのでリンク置いときます。これからソフトを導入するなら、ちょっと目を通しておくことをお勧めします。ちなみにうちの研究室にあったのはこの中のgaussianってやつです。高いけど超メジャーで計算が超早いソフトらしい。やったぜ。

量子化学および固体物理計算ソフトの一覧

けっこうフリーソフトもありそうですね。あと、ソフトによってできることが違う。色々調べた感じだと、有料ならGaussian、無料ならMOPAC6,7とGAMESS(US)がよく使われているみたいです。無料ではFireFly,NWChem,ABINITも結構人気っぽい。CP2Kは無料なのにこれを入れるだけでいろいろな計算カバーできそうなのでちょっと使ってみたい。QUANTUM ESPRESSO(QE)は無料なのにめっちゃ評判よさそう。個体物理計算するときはこれを使うべきなのかな?このフォーラムとかめっちゃQEオススメされてる。
計算速度比較してくれているサイトもあった。
これだけあるとなかなか迷いますねw
とりあえず本記事では無料のやつを使うつもりです。

でもこれらは、単に計算することのできるソフトだけをまとめているみたいです。

「・・・いや、何言ってんの計算したいんだからそれでいいじゃん。」と思うことでしょう。しかし、これだけではダメなのです。まず計算の前に、計算したい数字を作るソフトが必要です。また、どのような条件で計算するかを設定するソフトも必要ですね。

計算は数字をこねこねする作業ですが、我々が計算して求めたいのは立体的な分子に関する性質です。分子は映像として描ける形があり、分子=数字ではないですよね。例えばメタンCH4は、炭素1つと水素4つという形であり、もちろん1とか2のような単純に四則演算できる数字ではないです。

何が言いたいかっていうと、計算のためにはこの立体的な形を数字に落とし込める必要があるのです。

もっと簡単に言えば、原子のx座標、y座標、z座標や計算の条件をまとめた「インプットファイル」を作るソフトが必要です。原子を配置するのは「分子モデリングソフト」とかで検索したらいろいろ出てくると思います。

また、計算結果をうまいこと表示する必要があります。これは可視化ソフトなどで調べればよいと思います。

プレゼンテーション1aaa

モデリングソフトや可視化ソフトは、wikipediaのこのページ
の関連項目に英語版wikipediaへのリンクがまとまっているので参考にしてください。
あとは、
wikipediaのこのページ
とか、
英語版wikipediaのこのページ
にまとまっています。お互い書いてるソフトがちょっと違うのが気になるけど、結構種類ありますね。どれを選べばよいか迷います。
wikipediaじゃなくてオススメのソフトをまとめてくれているサイトをいくつか検索するといいと思います。
このサイトは本当にわかりやすいです。ソフトごとに一長一短があって結局好みらしいので適当に選べばよいみたいです。
あとはこことかも参考になります。
実際に選ぶときはこのサイトのレビューを参考にするといいでしょう。


いろいろなサイトを見た結果、簡単にインストールできていろいろ試すことができ、それなりに高速な無料ソフトって考えると、
“モデリングソフト+Firefly”
が一番よさそうです。
Fireflyは無料ですが、インストールするためにはライセンスキーが必要で、ライセンスをもらうために個人情報を制作者に送らないといけないです。また、メールの返信を待つために数日かかります。これが煩わしい人は、とりあえず

“Winmostar + MOPAC6,7 (+ NWChem + MoCalc2012)”

という組み合わせで遊んでみるのがよさそうです。Winmostarの無料版はMOPACが付属しているみたいで、モデリング・インプットファイル生成・計算まで一気に行ってくれるみたいです。使わない手はないと思います。
MOPACは半経験的手法という速いけど精度がまあまあな手法の計算しかできないので、NWChemのような他の計算ソフトを使うためには有料版のWinmostar(学生は無料で使える)を導入する必要があります。こういう時はモデリングだけWinmostarで行って、インプットファイル生成はMoCalc2012のようなほかのソフトを使うという使い方をすればいいみたいです。

本連載では後者の組み合わせでやっていこうと思います。下にインストール方法を書いておきました。

もっと高性能なものを使いたいって人はQuantum EspressoとかCP2Kがよさそうですが、インストールが激ムズでした。最初これを使うつもりでしたが、あまりにもインストールのハードルが高いと量子化学計算で軽く遊ぶっていうこの記事のコンセプト合わないので辞めました・・・。気が向いたらこれらの完全無料でできるインストール方法の記事を別に書くかもしれないです。

もっとよさそうな組み合わせがあったら紹介します。というか無料だしいろいろなソフトを試してみたらいいと思います。この記事を書くにあたって自分もAvogadro,Gabedit,Ficioといったモデリングソフトを入れて試してみました。最初はAvogadroを使って連載記事にしようと思いましたが、試しているうちに「これどう考えても無料版Winmostar使ったほうがいいな・・・」と思ったので辞めました(笑)
Avogadroはシンプルで使いやすいですし、分子書いてるときに簡易的な構造最適化ができてぬるぬる動いて面白いので皆さんにも試してみてほしいです。この記事の一番下に一応導入方法を書いておきました。



まずは、モデリングソフト・インプットファイル生成ソフトのWinmostarを入れましょう。
公式サイト
からダウンロード・インストールします。特に難しい設定は必要ないです。

次は、計算実行ソフトを入れましょう。
この連載記事では無料のMOPAC6,7(別名OpenMOPAC)NWChemを使います。
でも、MOPAC6,7はWinmostarに付属しているので別に入れる必要はないです。ありがたいですね。

NWChemのインストール方法
NWChemはGUIではなくCUIのアプリケーションです。映画とかでよくある、凄腕ハッカーが黒い背景、白文字でキーボードをカタカタ打っているやつです。マウス操作ができないですが、計算させるだけなので何の問題もありません。Linuxユーザーならおなじみだと思います。

インストール方法についてですが、公式ページのリンク置いておきます。非常に長いですが、[How To: Windows Platform]っていう項目にインストール方法が書いています。

大まかに分類すると、WindowsユーザーがNWChemを使う方法は2種類あります。1.Linuxの仮想環境を構築して仮想環境上で使う 2.cygwinやMingWを用いて.exeファイル(バイナリファイル)を作る。
インストールが簡単なのは1番です。あまりPCに詳しくない人はこちらをお勧めします。

1.Linuxの仮想環境下で使う方法について
まず、Windows上に仮想環境を構築します。”仮想環境”っていう難しい用語に拒絶反応を示した方もいるかもしれませんが、キーボードをカタカタするような難しいことはしないので恐れる必要はないです。簡単に言うとNWChemを動かせるLinuxという作業部屋、つまり”環境”をコンピューターの中に”仮想的に”建設すると思ってください。

仮想環境は公式がお勧めしている通りWSL+Ubuntuでいいでしょう。windowsにLinuxの仮想環境を構築するとき、めっちゃ簡単で私もオススメです。私の過去記事でも登場しました。このサイトこのサイトを参考にして導入してください。画像がいっぱいあってわかりやすいです。2020年8月8日現在、私は”Ubuntu 18.04 LTS”というバージョンにしました。

Ubuntuを入れることができたら、あとはそこにNWChemをインストールするだけです。Ubuntu上で
sudo apt install nwchem
と入力してください。Ubuntuのインストール時に自分で設定したパスワードを入力して、終わりです。めっちゃ簡単です。

2.ソースファイルからコンパイルする方法について
ちょっとPC上級者向けですが、使用するときに便利なのはこちらです。例えば後述のMoCalc2012から直接実行することができるようになります。NWChemで本格的に遊ぶなら頑張ってこちらの方法を試すことをお勧めします。

次に、インプットファイル生成ソフト(プリ・ポストプロセッサ)を入れましょう。
MolCalc2012のインストール方法
NWChemのインプットファイル生成ソフトとしてMoCalc2012を使うことにします。機能は十分です。
ダウンロードページからダウンロード・インストール。難しい設定はいりません。とりあえず入れておいてください。



お疲れさまでした。これで必要なソフトは大体導入できました。次回は実際に計算を実行してみましょう!







Avogadroの入れ方
最初はこれ使おうと思って記事書いていました。インストール方法をせっかく書いたのに全部消すのはもったいないので一応残しておきます。
AvogadroはAvogadroのサイト上部にある”DOWNLOAD”からダウンロードしましょう。インストール中に下のような画面になると思います。

Avogadro環境変数

環境変数PATHにAvogadroのパスを追加するか?と聞かれています。Windows用のほかのアプリケーションでAvogadroを開きたい!っていう時に、インストールしたavogadro.exeの場所をうまく検索できるように設定するか?という設定です。まあよくわからないかもしれませんが、とりあえず画像のように選択してください。パパっと入れよう。

あとは画面の指示通りに次へボタンを押せばいいです。軽いソフトなのかインストールも速いですね。Avogadroを入れたら下の画像のようなウインドウが出てくると思います。

メニュー画面Avogadro

ここに分子を書いていくわけですね。

MOPAC6,7の入れ方
Winmostarの場合はMOPACが付属していますが、Avogadroの場合は付属していません。なので自分で入れる必要があります。このサイトがインストール方法についてわかりやすくまとめてくれて参考になりました。
インストールサイトはここです
MOPAC6とMOPAC7の”Executable”のリンクをクリックすればダウンロードできます。mopac6.exeとmopac7.exeを適当なわかりやすい場所に入れときましょう。Avogadroでモデリングを行い、設定を書いたテキストファイルを編集して、これらのexeで計算実行という流れです。めっちゃ簡単です。注意してほしいのは、Avogadro内にMOPACのインプットファイルを生成する項目がありますが、これはもっと後のバージョンの有料のMOPACのインプットファイルを出力するためのものです。なので、実際に計算させるときは別のインプットファイル生成ソフトを使うかメモ帳で直接書き込む必要があります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました